いっけん同じように見える青のりとあおさですが、実は全くの別物って知っていますか?
日常、大きいくくりで「青のり」と言ってしまっているのですが、本来なら「青のり」「あおさ」と言い分けるべきもの。スーパーなどの海苔コーナーで「青のり、青のり」と呟きながら買った物、青のりと思って食べていた物、もしかしたら青のりでなくあおさかもしれません。
青のりとあおさが隣り合わせで棚に並んだとき、あおさの方が大きい袋で売られているので目立ちます。青のりはあおさの約10倍の値がつくため、小さい袋や瓶で売られていることが多く見落としがち。同じ物と思っていると、価格の安さであおさに手が伸びそうです。
風味を味わいたいのならダントツ青のり! でも、あおさの栄養面は青のりにひけをとりません。
ぱっと見似ている青のりとあおさ、一体どこに違いがあるのでしょう?
青のりはアオサ科のアオノリ属
青のりはアオサ科のアオノリ属に分類される海藻です。形状は糸状。淡水と海水が交じる河口域などに自生しています。しかし近年は、天然物の収穫が減り養殖が主流。加工したものは粉状ですが、よく見ると少し細長いこより状です。細胞が1層なので口の中に入れるとふわっと溶け、歯につきにくいのがいい! 風味がよく、高級品として扱われています。主な産地は生産量の多い順に愛媛県、徳島県、岡山県など。徳島県と岡山県は、細い糸状のすじ青のりですが、ほとんどが養殖です。愛媛県は幅が広い平青のり・うすば青のり。青のりは細い糸状のほうが好まれるので、幅の広い物は比較的安価です。高知県はすべて天然物。一般的に天日による乾燥をおこなうので、色合いと風味が長持ち。希少価値のある高級品です。
あおさはアオサ科アオサ属
あおさはアオサ科アオサ属に分類される海藻です。形状は長さが5㎝~10㎝ほどの葉っぱ状。比較的浅い海辺の岩場などに生息しています。国内生産量の70%を三重県が占め、他には静岡県、鹿児島県、愛媛県が有名。食用には大小の穴があいているアナアオサが使われることが多く、独特のぬめりと強い旨味が特徴です。細胞が2層で厚みがあるので、加工するとフレーク状になり、口の中に入れると溶けずに食感が残ります。熱に強く、焼きそばやお好み焼きなどの仕上げにかけると香りがいい! あおさの緑が料理を引き立てます。味噌汁やうどんに入っているあおさも磯の風味がして美味しいです。
海苔の佃煮はヒトエグサ科ヒトエグサ属
ごはんのお供としてお馴染みの海苔の佃煮も、実は海苔ではないのです。佃煮に使われているのは、ヒトエグサ科ヒトエグサ属に分類される海藻で、青のりとあおさとはまた別のものです。形状は長さ4㎝~10㎝の葉状。ほぼ円形で、成長するに従って放射線状に裂けたりしわができたりします。細胞は一層なので薄くて柔らかい。佃煮の他にもふりかけや味噌汁、お吸い物の具、海藻サラダにも使われます。沖縄県ではアーサーと呼ばれ、アーサー汁や天ぷらの材料に使われています。
青のりとあおさの栄養素と効能
別名「海の緑黄色野菜」と呼ばれる海藻類。食物繊維が豊富なことは知られていても、たんぱく質が豊富に含まれていることはあまり知られていないかもしれません。中でも青のりとあおさには、卵の約2倍もたんぱく質が含まれているのです。
三大栄養素(100gあたり)
エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | |
青のり 素干し | 164 kcal | 29.4 g | 5.2 g | 41.0 g |
あおさ 素干し | 130 kcal | 22.1 g | 0.6 g | 41.7 g |
青のりはビタミンが豊富!
青のりにはカルシウムや鉄分のミネラルの他、葉酸などのビタミン類が多く含まれています。疲労回復、利尿作用、動脈硬化や高血圧予防など丈夫な身体を作るのに大切な栄養素が豊富です。
カルシウム
骨や歯を作る栄養素
鉄
赤血球を作るのに必要な栄養素
ビタミン
青のりには下記のビタミン栄養素が含まれています。
青のりに含まれるビタミン
- β―カロチン
- ビタミンA
- ビタミンE
- ビタミンK
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ナイアシン
- ビタミンB6
- ビタミンB12
- 葉酸
- パントテン酸
- ビオチン
- ビタミンC
ビタミンB1は疲労回復。ビタミンB2は皮膚や粘膜を保護します。ナイアシン、ビタミンB6、パントテン酸は健康維持、脳神経を正常に働かせ、動脈硬化を予防してストレスの緩和をはかります。葉酸、ビタミンB12には新しい赤血球を作る働きがあり、ビタミンC、Eは動脈硬化、皮膚や血管の老化防止、免疫力を高めます。カルシウム、リン、マグネシウムは骨と歯の構成。カリウムが疲労回復や利尿作用、高血圧の予防を助けます。
あおさはミネラルが豊富!
あおさは食物繊維が豊富で、カリウムやマグネシウムなどのミネラルを多く含んだ食品。高血圧、動脈硬化、骨粗鬆症、便秘、貧血などの予防効果に期待がもてます。
食物繊維
あおさの食物繊維は100g中44.2gも含まれていて、海藻類の中ではトップクラスです。一日の摂取量は男性21g、女性18g以上が理想的。一度にとることは難しくても、水溶性と不溶性の双方が備わっているので、様々な食べ方で効率的に摂取することができます。例えばお味噌汁に3g程度のあおさを入れ1日3食とると、きんぴらごぼう1皿分と同じ整腸効果が期待できるそう。便秘、心筋梗塞、糖尿病、肥満などの生活習慣病の予防にはとっても役立つ食材なのです。
β―カロチン
強い抗酸化作用があり、活性化酸素の発生、酸化を防いでくれます。細胞の修復や動脈硬化、がんの発生を予防。
ナトリウム
体内の水分量をいつも適切な状態に調節したり、神経や筋肉を正常に動かすために重要な役割。
カリウム
血圧の低下、脳卒中の予防、骨密度の増加。体内の余分なナトリウムを排出し、むくみを防止。
マグネシウム
骨や歯の形成に必要な栄養素。不足すると骨粗鬆症、心疾患、糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まる可能性がある。
まとめ
あまり意識することがなかった青のりとあおさの違い。たこ焼きやお好み焼きにかかっていたものも、思い返してみると形状からしてあおさ!? 我が家の冷蔵庫の「青のり」と称して使用していた物も、袋の表側に「青粉」裏側に「あおさ」と書いてありました。ポテトチップのりしお味の原材料を調べてみると青のりとあおさの両方が書かれており、某メーカーの青のりしょうゆ味のおせんべいにも青のりとあおさの両方が使われています。コストの問題もあるのでしょうが、食感の違いが美味しさに繋がったり、少量とはいえ双方の栄養がとれるのでいいのかもしれません。
希少のため高価な青のりVS庶民の味方というべきお財布に優しいあおさ。双方には甲乙つけがたい栄養がたくさん詰まっています。なかなか主役にはなりえない食材ではありますが、料理の用途で使い分け積極的に食すことをお勧めします。購入の際には緑が濃いものを選び、使った残りは冷凍庫へしまいましょう。水分がないのでサラサラした状態で鮮度を保ってくれますよ。
参考