透明でプルプルした喉越しとモチモチした触感が特徴の冷たい和菓子・わらび餅は日本人には馴染み深い伝統的なお菓子です。
わらび餅は材料に「わらび粉」を使いますが、わらび粉には「本わらび粉」と「わらびもち粉」の2種類があります。
あなたは、この2種類の違いについてご存知でしょうか?
今記事では「本わらび粉」と「わらびもち粉」のそれぞれの特徴を、美味しいわらび餅のレシピを交えて詳しく解説します!
「わらび」とは?
わらび餅の「わらび」とは、漢字で『蕨』と書くシダ植物です。
蕨は葉の部分が山菜として有名です。蕨は地下に茎がある植物なので、山菜の蕨は茎のように見えますが正確には葉が可食部です。
「わらび粉」は、地下深くにある蕨の根の部分から取り出したでんぷん質を集めて粉にしたものです。
わらび粉・わらび餅の起源
わらび粉とわらび餅が作られるようになったのは、平安時代からだといわれています。
平安時代の醍醐天皇の好物がわらび餅で、食べ物に『太夫』という位を与えた程にわらび餅を好んで食べていたとも伝えられています。
関東、関西でわらび餅の食べ方が違う
日本には、同じ食べ物でも地方によって食べ方が異なる物が沢山あります。
わらび餅も関東と関西で食べ方が若干異なります。
関東のわらび餅は、黒蜜ときな粉をかけて食べます。
一方で関西のわらび餅は、きな粉だけをかけて食べます。抹茶をかけて食べる地域もあります。
わらび餅の作り方自体に大きな違いはありませんが、地域や家によって丸型・サイコロ型・三角形の3種類の形で作られています。
「本わらび粉」と「わらびもち粉」の違い
わらび餅を手作りしたいと思って材料を買いに行った際に、スーパー等の売り場に「本わらび粉」と「わらびもち粉」の2種類があって困ったという経験がある人もいらっしゃるでしょう。
「本わらび粉」と「わらびもち粉」には、ハッキリとした違いがあります。
下記にて、その明確な違いについてご説明します。
本わらび粉とは?
「本わらび粉」は植物の蕨から採れるでんぷん質を100%使って作られている、混じり物が一切無い本物のわらび粉です。
わらび粉の作り方は蕨の根を切り取り、臼で潰してから水洗いします。でんぷん質を沈殿させて取り出しては、粉砕した蕨の根を再び水洗いしてでんぷん質を沈殿させて取り出すを何度も繰り返します。
洗って取り出したでんぷん質を集めて乾燥させた粉が「わらび粉」です。
わらび粉は作る際に非常に手間が掛かる上に、蕨の根1㎏から僅か7~8gしか採れません。
蕨のでんぷんを100%使っている「本わらび粉」は希少価値が高く、価格も高額です。
本わらび粉の特徴
・粉の色が灰色
・サラサラした粉ではなく、細かい塊がある
・塊は指で摘まむと簡単に崩れる
・水を加えると強い粘り気が出る
・価格が高額
・わらび餅の色は黒っぽい
・わらび餅が良く伸びる(餅のように歯で噛み切れない)
わらびもち粉とは?
「わらびもち粉」はわらび粉に甘藷でん粉(サツマイモのでんぷん)・馬鈴薯でん粉(ジャガイモのでんぷん)・葛でん粉(葛のでんぷん)等が混ぜられている物です。
餅米の粉(白玉粉・道明寺粉)やうるち米の粉(上新粉)は混ぜません。「もち粉」と名前が付いていますが、わらび粉を含めて正確には餅粉ではありません。
わらび粉が大変希少な為、わらびもち粉は「わらび餅をもっと手軽に食べられるように」と作られたブレンド粉です。
なお余談ですが、馬鈴薯でん粉は一般的に片栗粉として売られている粉でもあります。
片栗粉も「カタクリ」というユリ科植物の球根に含まれているでんぷん質を集めて作られた粉が本物です。
しかしカタクリも現在は希少な植物である為、スーパー等で売られている片栗粉は殆どが馬鈴薯でん粉です。
わらびもち粉の特徴
・粉の色は白っぽい
・本わらび粉と同じく小さな塊があるが、ザクザクしていて固い
・粘り気が少ない(水を加えるとトロトロした状態になる)
・価格が安価
・わらび餅は透明もしくは薄い灰色
・わらび餅は余り伸びない(歯で噛み切れる)
基本の「わらび餅」の作り方
「本わらび粉」と「わらびもち粉」の違いについて理解した上で、ここからはわらび粉を使って作る暑い季節には特にピッタリの美味しいわらび餅の作り方をご紹介します。
わらび餅の作り方は、本わらび粉の場合でもわらびもち粉の場合でも変わりません。
子供でも簡単に作れる和菓子なので、お子さんがいらっしゃれば御一緒に作るのもおススメです。
わらび餅の材料(3~5人分)
・わらび粉(本わらび粉またはわらびもち粉):60g
・砂糖:80~100g(甘さの好みで調整して下さい)
・水:300ml
・きな粉・黒蜜・抹茶:好みの量
わらび餅の作り方
(1)ボウルにわらび粉・砂糖・水を入れて、泡だて器で良く混ぜ合わせる
(2)液をざるで濾しながら鍋(※深めの片手鍋がおススメ)に移す
(3)鍋を弱めの中火にかける。液に火が通っていない内から木べらで鍋底の中央部分を手前から奥、奥から手前と往復で動かす
(4)液に火が通って塊が出来てきたら、木べらで鍋底を全体的に混ぜる
(5)液が徐々に固まって粘りが出てくるので、全体的に透明(または黒っぽい灰色)になるまで焦げないように手早く練り混ぜる(※力が必要になるので、へらの柄の部分を握って混ぜる)
(6)餅に艶が出たら火を止める。
(7)丸形にする場合は、スプーンで餅をすくいながら水を入れたボウルに移して冷やす
(8)四角形・三角形にする場合はバットに餅を移す。人肌程度になるまで常温で冷ましてから、食品用ラップをかけて冷蔵庫で数分間だけ冷やす
(9)丸形の場合は冷えた餅をボウルからざるに移して、水気を良く切ってから器に盛る
(10)バットで作っている場合は、まな板に餅を移して包丁で一口サイズに切り分ける。
(11)四角形・三角形タイプの場合は、別のバットに入れておいたきな粉・抹茶に餅を絡ませてから器に盛る
(12)丸形タイプのわらび餅は、器の上から直接きな粉をかける
(13)お好みで黒蜜をかけて食べる
まとめ
平安時代から食べられているわらび餅の原料「わらび粉」は、蕨(わらび)というシダ植物の根から採れるでんぷん質を集めて粉状に乾燥させた食品です。
「本わらび粉」はわらび粉100%のものです。粉の色は灰色で餅は黒っぽく、水を加えると強い粘り気が出る等が特徴です。
「わらびもち粉」は、希少で高価なわらび粉に甘藷でん粉・馬鈴薯でん粉・葛でん粉等を加えているブレンド粉です。粉の色は白っぽくて餅は透明か薄い灰色、水を加えても粘り気は余り出ません。
本わらび粉およびわらびもち粉で作る和菓子「わらび餅」は、定番のきな粉・黒蜜・抹茶以外の食品を使ってアレンジする事が可能です。
水の代わりに牛乳を入れて作る「ミルクわらび餅」・水に砂糖とインスタントコーヒーを入れる「コーヒーわらび餅」・オレンジジュース等で作る「フルーツわらび餅」等、様々な変わり種わらび餅のレシピもインターネット上でレシピが掲載されています。
是非とも定番や変わり種まである美味しいわらび餅を作って、おやつの時間を楽しんでくださいね!