「道明寺」と聞くと、大抵の方は関西の桜餅をイメージするでしょう。
関西風桜餅・道明寺は「道明寺粉」という材料を使って作る和菓子ですが、あなたは道明寺粉が何で出来ている物なのかご存知でしょうか?
さらに道明寺粉は、桜餅以外の様々な料理でも使用することが出来ます。この事もあなたはご存知でしたでしょうか?
今記事では「道明寺粉」とは一体何なのか?何故「道明寺粉」と呼ぶのか?桜餅以外にどんな料理で使えるのか?等といった、様々な疑問にお答えします!
道明寺粉とは?
「道明寺粉」とは、水に浸して蒸した餅米を乾燥させてから、粗めに砕いて作られた餅粉です。
砕き方は5種類あり、道明寺粉は粒が粗い順に全粒・2ツ割れ・3ツ割れ・4ツ割れ・5ツ割れとそれぞれ呼ばれます。
5ツ割れ以上に細かく砕かれると「新引粉(しんびきこ)」という別の食品として扱われます。
道明寺粉自体は本来、無色透明か白に近い色をしています。
桜餅等に使われる道明寺粉は、餅が桜のような色になるように食紅が混ぜられています。
「道明寺粉」の名前の由来
道明寺粉の名前の由来は、大阪府藤井寺市にある『道明寺天満宮』で作られていた食品が起源だといわれています。
道明寺天満宮で作られていた「糒(ほしいい)」は、蒸した餅米を天日干しして乾燥させた食品です。道明寺の尼僧が作っていた糒は、戦国時代に軍糧や携帯食として大事なものでした。
糒は江戸時代までは武士か将軍しか食べられない希少な食べ物でしたが、明治時代になってから一般人にも広く食べられるようになりました。
併せて糒を砕いて粉にした物を、和菓子の材料にして食べるようにもなりました。
この砕かれた糒が「道明寺粉」の元祖だと伝えられています。
道明寺粉で作れるお菓子と料理
戦国時代から作られていた保存食「糒」が起源である道明寺粉ですが、定番の関西風桜餅(道明寺)以外にも様々な料理やお菓子で使用できます。
下記にて「道明寺粉」を使って作る事が出来る3種類の和菓子と2種類の料理をそれぞれご紹介します。
作り方も併せてご紹介していますので、気になった物を是非とも作って楽しんでみてください。
道明寺(関西風桜餅)
先ず初めにご紹介するのは、道明寺粉を使う和菓子でお馴染みの「道明寺(関西風桜餅)」です。
道明寺粉と桜餅に使う「桜の葉の塩漬け」は、製菓材料専門店やインターネットの通販サイトを使えば簡単に手に入ります。
道明寺の材料(10個分)
・道明寺粉:120g
・桜の葉(塩漬け):10枚
・水:180ml
・砂糖:大さじ1.5杯
・つぶあん(またはこしあん):150g
・塩:少々
道明寺の作り方
(1)桜の葉を10分間水に浸して塩抜きする。水気を良く拭いて置いておく
(2)あんを10等分にして丸めておく
(3)耐熱ボウルに道明寺粉と水を加えて混ぜ合わせる
(4)食品用ラップをかぶせて、電子レンジで600W・5分加熱する
(5)ボウルを電子レンジから取り出してラップを外す。白砂糖・塩を加えて木べらで切るように混ぜる
(6)濡れ布巾をボウルにかぶせて、10分間蒸らす
(7)粗熱が取れたら食品用ラップに餅を乗せる。ラップ越しに棒状に成型してから、包丁で10等分に切る
(8)切り分けた餅を1つ1つ丸く伸ばし、丸めておいたあんを包む
(9)桜の葉を餅を包むようにかぶせる
椿餅
椿餅(つばきもち・つばいもち)は『源氏物語』の作中にも登場する、平安時代から食べられている日本最古の餅菓子です。
桜餅のように椿の葉が餅に乗っているのが特徴です。当時は砂糖が入っていない淡白な味だったので、お菓子ではなく軽食として貴族達に好まれて食べられていました。
椿餅は餅米を使って作る食べ物ですので、道明寺粉でも勿論作る事が可能です。
椿の葉も、製菓材料専門店や通販サイトを使えば入手出来ます。
家の庭に椿の木があれば、その葉を使っても構いません。
椿餅の材料(8個分)
・道明寺粉(※椿の葉が映える無着色の物がおススメ):100g
・椿の葉:16枚
・上白糖:25g
・塩:ひと摘まみ
・こしあん:120g
椿餅の作り方
(1)ボウルに道明寺粉を入れて軽く水洗いしてから、粉全体にかぶるくらいの水を入れる
(2)1~2分そのまま浸しておく
(3)蒸し器を火にかける。蒸気が上がった頃に、道明寺粉を薄く広げて入れて15分蒸す
(4)蒸し器から餅を取り出し、熱いうちに上白糖・塩を入れて木べらで切るように混ぜ合わせる
(5)しっかりと餅を冷ましてから、8等分にしておく
(6)こしあんを8等分にして、俵型に成型する
(7)餅を伸ばしてあんを包む
(8)椿の葉を餅の上下に1枚ずつ貼り付ける
道明寺羹
道明寺羹(どうみょうじかん)は、道明寺粉とあんこを寒天で包んで作る冷たい和菓子です。
つぶつぶした道明寺粉の食感と寒天のつるつるした喉越しを同時に味わえる、見た目も鮮やかな春夏におススメのお菓子です。
道明寺羹の材料(6個分)
・道明寺粉:60g
・熱湯:60ml/200ml(それぞれで用意しておく)
・水:400ml
・粉寒天:6g
・グラニュー糖:100g
・つぶあん(こしあん):110g
道明寺羹の作り方
(1)ボウルに道明寺粉に60mlのお湯を入れてから、混ぜずに食品用ラップをかけて10分間放置する
(2)ラップを外して200mlのお湯を加える。再びラップをかけて10分間放置したら、ざるで濾して道明寺粉から余分な水分を切っておく
(3)あんこを6等分にして丸めておく
(4)鍋に水と粉寒天を入れて火にかける。強火で一気に沸騰させて粉寒天を溶かす
(5)グラニュー糖を加える。混ぜ合わせて再び沸騰したら火を止める
(6)道明寺粉を鍋に入れて混ぜ合わせる
(7)粗熱が取れる程度まで冷ましたら、容器に半分程度の量で液を注ぎ入れる
(8)5分程度置いてから液が完全に固まってしまう前にあんこを入れる。さらに液を追加で入れてから冷蔵庫で1時間冷やし固める
お好みで抹茶・きなこをかけて食べても美味しいです。
道明寺揚げ
道明寺粉はパン粉の代わりに使って揚げ物も作れます。道明寺粉で作った揚げ物は「道明寺揚げ」と呼ばれます。
下記は衣が香ばしくてカリカリしている、あられのような食感が非常に美味しい「エビの道明寺揚げ」のレシピです。
エビの道明寺揚げの材料(2~3人分)
・道明寺粉:30~50g程度
・無頭エビ(ブラックタイガー等):8尾
・塩・コショウ:適量
・片栗粉:適量
・小麦粉:適量
・卵:1個
・揚げ油:適量
・塩・柚子胡椒・レモン等:好みの量
エビの道明寺揚げの作り方
(1)エビの足を取り除く。尾側の1節だけ残して殻を剥く
(2)エビの背に包丁で浅く切り込みを入れる。背ワタを包丁でかき出して取り除く
(3)ボウルに塩・片栗粉・エビを入れて軽く揉む。軽く水洗いをして塩と片栗粉をエビから取り除いてから、水気を良く拭き取る
(4)エビの尾先と剣先(しっぽの尖っている部分)を斜めに切り落とす。包丁でしごいて尾の中に入っている水を取り除く
(5)まな板にエビを腹を上にして置き、包丁で筋に対して斜めに切り込みを入れる。さらに指でエビをまな板に押し付けるようにして筋を切っていく
(6)エビに塩・コショウを振って下味を付ける。20分置いてから出てきた水気をキッチンペーパー等で良く拭き取る
(7)ボウルに卵を入れて溶かす。少量の小麦粉を卵液に入れて良く混ぜ合わせておく
(8)エビに小麦粉→粘度を付けておいた卵液→道明寺粉の順でまぶす
(9)180℃に熱した油で衣が狐色になるまで揚げる
(10)油を良く切ってから器に盛りつける。お好みで塩・柚子胡椒・レモン等を添える
道明寺中華おこげ
最後にご紹介するのは、サクサクした食感のおこげに熱々の中華あんをかけて音と味を楽しむ「道明寺中華おこげ」です。
道明寺粉は、おこげ作りに使います。
道明寺中華おこげの材料(2人前)
【おこげの材料】
・道明寺粉(※全粒もしくは2ツ割れタイプ):250g
・サラダ油:適量(揚げ焼きするので多めにご用意下さい)
【中華あんの材料】
・豚こま肉:80g
・白菜:50g
・チンゲン菜:50g
・タケノコ(水煮):40g
・うずらの卵(水煮):4個
・きくらげ(乾燥):5g
・鶏がらスープの素:小さじ1
・水:200ml
・オイスターソース:小さじ1
・しょうゆ:小さじ2
・料理酒:大さじ1
・水溶き片栗粉:大さじ1
・ごま油:小さじ2
道明寺中華おこげの作り方
(1)道明寺粉を炊飯器の窯に入れ、水を1.5合分入れて1時間放置する
(2)炊飯器で固めに炊く。しゃもじで軽くほぐしてから、バットの上に1cmの厚さになるように広げて粗熱を取る
(3)タケノコとうずらの卵の水気を良く切っておく。タケノコを3cm角の薄切りにする
(4)きくらげを水に漬けて戻す。水気を良く拭き取る
(5)チンゲン菜と白菜は3cm幅に切る
(6)おこげを作る。冷ましておいた餅を包丁で5cm角に切る
(7)フライパンの底から3cm程の深さまで油を注いで火にかける。180℃まで熱したら切った餅を加えて両面を5分ずつ揚げ焼きする
(8)こんがりとした色が混ざったら餅を取り出して油切りをする
(9)フライパンの油をキッチンペーパーで拭き取ってから、ごま油をひく。豚こま肉を入れて炒める
(10)火が通ったらチンゲン菜と白菜の茎の部分→きくらげ→タケノコ→チンゲン菜と白菜の葉の部分→うずらの卵の順でフライパンに入れて火が通るまで炒めていく
(11)鶏がらスープの素・水・オイスターソース・しょうゆ・料理酒を加える。水が沸騰してから2~3分煮込んだら、水溶き片栗粉を加えてとろみを付ける
(12)火を止める。器に餅を入れてから、熱々の中華あんをかける
まとめ
道明寺粉は、大阪府にある『道明寺天満宮』で作られていた保存食・糒(ほしいい)が起源だと伝えられています。
ピンク色のイメージが強いですが食紅で色が付けられており、本来は無色透明か白っぽい色をしています。
原材料は餅米で、蒸した餅米を乾かしてから粗く砕いたものを「道明寺粉」・細かく砕くと「新引粉」と呼ばれます。
関西風桜餅「道明寺」だけではなく、道明寺粉は揚げ物やおこげ等様々なお菓子や料理に使う事が出来ます。
道明寺粉をフライパンで炒っても「あられ」として美味しく食べられます。あられにする場合は、そのままだと味が殆どしないので塩をかけて食べましょう。
是非とも桜餅だけではなく、様々な料理にも道明寺粉を活用してみて下さいね!