青物野菜(ほうれん草、小松菜など)や青魚(ブリ、サバなど)を大きいくくりで「青物」といいますが、本来の「青」とは違います。「じゃあ青は? 」と聞かれたら?ひと昔前なら「かき氷のブルーハワイ」や「ガリガリくんのサイダー味」と答えたのですが、今は野菜、食品、スイーツと青い食べ物が増えています。本来「青」という色は食欲を減退させる色とされているですが、ウケているのはなぜでしょう? 「青」といっても明るい色から暗い色と幅広く、中にはギョギョッとなるものも…。「完全ウケ狙いでしょう」って思えるものもあるのですが、「いま話題」なんて聞くと好奇心がそそられます。食べてみたくなりませんか?
かき氷のブルーハワイってどんな味?
仕事柄かき氷を売りますが、ブルーハワイは若者や子供に人気です。「ブルーハワイってどんな味? 」と聞かれても説明が難しい。1980年代に流行ったカクテルをまねたのでしょうけど、かき氷シロップの場合は色だけで、ブルーハワイ味というものはありません。安価なシロップは色の違いだけで味や匂いに大差はなく、同じブルーハワイでもメーカーによって味が違います。青色の正体は青色1号という着色料。かき氷を食べ終わった舌ベラは真っ青です。ちなみにカクテルの方の青色の正体はブルーキュラソーというリキュールです。
自然界に存在する青色の食べ物
青色の食べ物には自然界に存在するものと人工的に作られたものがあります。どこからどこまでを青色と呼んでいいのかわかりませんが、大きい範囲でくくると紫色のナスやブルーベリー、緑色に近いチョコミントがあります。鮮やかな青色ではアオブダイやバタフライピーなどが浮かびます。
チョコミントの青はスピルリナ
夏になると恋しくなるチョコミントアイス。「歯磨き粉みたい」なんて言われたアイスも、今ではすっかり定番です。最近ではチョコレートでも見かけます。あのブルーがかったグリーンは何からできているのでしょう。色からすると人工的な感じがしますが、意外や意外、自然介に存在するスピルリナからできています。スピルリナとは30億年ほど昔から塩水湖に生息しているとされる藻類の一種です。形が螺旋形をしているところからスピルリナ。スピルリナはたんぱく質、β―カロチン、ビタミン、ミネラルが豊富で、スーパーフードの王様と言われています。糖尿病や高血圧などの成人病予防になると、サプリメントも多く出ています。
イラブチャー
「沖縄になると食べる魚も違うもんだね」。魚屋さんに青い魚が並んでいるのをテレビで見て驚いたことがあります。熱帯魚のような鮮やかな青。沖縄ではブダイ科類の魚をイラブチャーといいます。青い魚というとアオブダイが有名ですが、沖縄県人が食べているイラブチャーはナンヨウブダイやヒブダイです。アオブダイとの違いは尾びれの形にあります。下腹部がエメラルドグリーンで尾びれの端が長く伸びているのがイラブチャー。アオブダイは毒性のあるスナギンチャクを餌にするため気をつけなくてはなりません。体内に蓄積された毒により食中毒を起こし死亡例もあります。イラブチャーはスナギンチャクを餌にはしないので、内蔵は避けるに越したことはありませんが安心して食べられます。イラブチャーの青い皮の下は淡白な白身。刺身やマース煮(塩煮)がおすすめの食べ方だそうです。
バタフライピー
東南アジアを原産とするマメ科の植物。日本名を「チョウマメ」といいます。インスタ映えすると注目の青い飲み物の正体はバタフライピーの花。青い花には抗酸化作用を持つポリフェノールの一種「アントシアニン」があり、エイジングケア、血栓や動脈硬化、眼精疲労の緩和に効果があります。逆に生理中や妊娠中の女性、血液凝固に疾患のある人は注意が必要です。バタフライピーは日本でも一年草として栽培が可能。暑さに強いつる性で夏場のグリーンカーテンとして楽しむこともできます。花びらはフレッシュでもドライでもハーブティーにして飲むことができます。バタフライピー自体には味や匂いがほとんどないので、味や匂いが欲しい場合は別の物を加えます。個人的にはレモングラスを入れるのが好きですが、原産国のタイではオフィスで働く女性に「アイスバタフライピー」が人気だそう。 作り方はマイボトルに水とバタフライピーの花びらを入れるだけ。バタフライピーの花びらは水でも抽出できるので、忙しい朝でも時間をかけずに作ることができます。たしかに! 朝から座ってパソコンでお仕事の方にはいいことづくめですよね。水分補給に「アイスバタフライピー」いかがですか? バタフライピーがテレビやSNSで注目されたのはきれいなブルーの飲み物というほかに色の変化が楽しめるからでしょう。バタフライピーティーにレモンやライムの果汁を入れると、不思議や不思議、色が青から紫に変わります。これはバタフライピーに含まれるアルカリ性のテルナチンという「アントシアニン」の一種にレモンやライムに含まれる酸性の「クエン酸」が入ったから。バタフライピーは「マジックティー」などと呼ばれ、心を楽しませてくれる飲み物でもあるのです。ほかに着色料としても使われています。
ブルーマロウ
ヨーロッパやアジアが原産のアオイ科の多年草。日本名を「ウスベニアオイ」といい、日本でも育てやすいハーブです。ブルーマロウはモナコ王妃グレース・ケリーが生涯好んで飲んだとされるハーブティー。淹れたてはバタフライピーのような青色、時間がたつと紫色、ピンクへと色が変化することから「夜明けのハーブティ」といわれています。粘液質が多く含まれていて「アントシアニン」「タンニン」が豊富。古代ギリシャやローマ時代から「薬草」として使用されていたそうです。鎮痛作用、抗アレルギー作用があり、とろっとした感触がのどの痛みや炎症を和らげます。口内炎ができたときは、口内をゆすぐと粘液成分が口内炎の表面に膜を作るので痛みが和らぎます。マシュマロのマロはブルーマロウのマロからきているのだとか。ブルーマロウの根の部分が原材料になっていて、昔はのどの薬として使用されていたのだそうです。刺激を受けやすいデリケートな肌用のヘア&ボディケア製品にブルーマロウが配合されているものを見つけました。ブルーマロウのとろみ成分がどの程度効くのか興味深い製品です。
人工的に青く着色された食べ物
年々、青い食べ物を受け入れる年齢幅も増えてきているのではないでしょうか? 一言に「 青」と言っても色々。受け入れやすいものから拒絶したくなるものまでありますよね。近年衝撃を受けたものは青いカニかまとカレーです。
青いカニかま
蟹に見せかけた赤い色でお馴染みのカニかまですが、「えっ」と思わず声がでてガン見してしまったソーダ味の青いカニかま。
子供がいれば「ものは試しに…」となったかもしれませんが、家には喜んでくれそうな年齢をとうに過ぎた大人ばかり。そもそも使い方、食べ方が浮かびません。
「こんな使い方があったとは! 」全く想像もつかない発想で食べてみたくなります。一正蒲鉾株式会社の若手が中心となって開発した商品で、から破りの第3弾目だそうです。1弾目が黄色「瀬戸内レモン風味」、2弾目がピンク「辛子明太子風味」、3段目が青色「ソーダ風味」、4弾目がオレンジ「みかん風味」、黒い「トリュフ風味」もあったとか。若手の熱弁により役員を説得しての発売だったそうです。第1弾の黄色が好評で売上もあったため、本来食欲を減退させるとされる青色は心配の声がある中、1回で承認されたそう。青いカニかまは発売されるとネットやテレビで話題になりました。
青いカレー
カレーの色を問われたら何色と答えますか? 家庭で作るカレーのイメージは茶色なのですが、 タイのグリーンカレーやインドのほうれん草カレーは緑色をしています。そして今、青、白、ピンクとカラフルな色のカレーがあるのをご存知ですか? 「茶色いカレーがどうすると青やピンクになるんだろう? 」不思議に思っていましたが、北海道発祥のホワイトカレーを使えば何色にもなりそうです。クリームソースがベースのホワイトカレーは一見クリームシチューのようですが、生姜やニンニク、クミン、コリアンダー、ガラムマサラ(ミックススパイス)などカレーのスパイスがしっかり入っているので、味は正真正銘カレーです。そこに色づけするものを入れれば色も味も変わります。例えば南瓜なら黄色のカレー、ピンク色のカレーにはビーツや苺などが使われているようです。青い色には何が使われているのでしょう? 青いカレーとして販売されているものに「オホーツク流氷カリー」や「青い富士山カレー」があります。
オホーツク流氷カリー
北海道北見市にあるインド料理クリシュナの「オホーツク流氷カリー」は、料理長マスク―ド・アラム氏が青いオホーツク海に浮かぶ白い流氷を試行錯誤の末カレーで表現したものです。青い色にはクチナシ青色素という着色料を使っていて、鶏肉を流氷に見立てています。レトルトも販売されていて、道の駅や空港、ネットで購入することができます。箱の中には青と白2色のカリーが入っていて、青いカリーの上に白いチキンカリーを流氷に見立てて置くようになっています。2015年のミラノ万博には「オホーツク四季カリー」として、早春の流氷カリーと共に盛夏の夕日をイメージした赤っぽいカリーと晩秋の霧をイメージした白っぽいカリーが出品されました。
青い富士山カレー
山梨県立富士山世界遺産センター内にある「FUJIYAMA CAFE(フジヤマカフェ)」の看板メニュー「青い富士山カレー」がSNSやテレビなどで話題。レトルトカレーも販売され、ネットで購入することができます。「『富士山カレー』と名のつくものが多い中、いかに本物の富士山に近づけるにはどうしたらいいか? 」をテーマに2017年11月頃から製作が始まったそうです。富士山のイメージをリサーチしたところ、やはり青い山肌に白い雪をかぶったのが富士山。茶色いカレーをどうしたら青くできるかが課題です。努力の末、独自開発したカレーペーストにココナッツミルクと乳製品を加え、ブルーハワイと同じ材料で色づけをすることで青いカレーができあがりました。さらにコクと旨味を出すために鶏肉と特産物である桃ピューレを入れ3時間以上煮込むことで完成したそうです。盛り付け方にも工夫があります。富士山型の白ごはんに青色のカレーをかけ、具材はピクルスとベーコン。ピクルスで樹海をイメージ、ベーコンで溶岩をイメージしています。現在はフジヤマカフェ以外に富士中央自動車道双葉SA下り「富士山テラス」「眺望の湯ゆらり」「河口湖ハーブ園」などでも食べることができます。
そして、この青いカレーを使い外側も青色、頂上の雪をココナツフレークで再現した「青い富士山カレーパン」が発売され、2020年日本カレーパングランプリ東日本焼カレーパン部門で最高金賞を受賞しました。
青いジャム
「青い森の天然青色りんごジャム」という青い色のりんごジャムがあります。青森県産の厳選された林檎をアンチャンティーで青くしています。アンチャンとはバタフライピ―のこと。バタフライピーというのは英名でタイ語でアンチャン。タイでは古くからごはんやお菓子をアンチャンで青く染めていました。アンチャンは青く染める天然色素です。「青い森の天然青色りんごジャム」は、青森市で人気の英語教室の先生によって生まれました。知人からもらったアンチャンティーを入れたとき、きれいな色に感動したそうです。直観的に「この美しい青で頑張っている女性を癒したい」と、最初の感動を信じ、かつてない青という色で商品作りを考えたそうです。観光客を意識し地元の林檎とコラボ。青森の食品づくりの技能集団である「青森県産業技術センター農産物加工研究所」に通い試作を重ね青いジャムができあがりました。
青いスイーツ
CARRE DE BLUE
青いチョコレートも人気です。幸せを呼ぶとされる青いチョコレートのCARRE DE BLUE(カレ・ド・ブルー)は、ホワイトチョコを農薬、化学肥料不使用のバタフライピーで着色しています。ホワイト、ライトブルー、ダークブルーの3種類が楽しめる9枚入りが人気のようです。
深海プリン
静岡県の沼津港にある沼津深海プリン工房では、日本一深い駿河湾の深海をイメージした「深海プリン」が売られています。なめらかなプリンの上に青いラムネのジュレがのっています。青い色にはクチナシが使われています。
深海モンブランもあります。和栗を使ったプリンとラムネ味の深海ソフト(夏季限定)の2種類から1つを選び、上に青く糸状のクリームをかけてくれます。青い色をしていても味は驚きの和栗です。
青いお酒
ビール、スパークリングワイン、日本酒などお酒でも幸せを呼ぶとされる「青」は人気です。
ボルスブルー
カクテル「ブルーハワイ」を作る必須アイテムのブルーキュラソー。あのきれいなブルーはブルーキュラソーががなくてはできません。キュラソーとはオレンジリキュールのこと。青い色をしていても味はオレンジです。数ある中で人気なのが「ボルスブル―」という銘柄。迷ったときはこれだそうです。1575年から作られているオランダ生まれの歴史の古いブルーキュラソーです。トロピカルなカクテル「ブルーハワイ」は、ブルーキュラソーのほかにラム、パイナップルジュース、レモンジュースを加えシェイクして作ります。
流氷ドラフト
網走の冬の風物詩「流氷」を仕込水に使い、天然色素のクチナシでオホーツク海の青をイメージした「流氷ドラフト」が網走ビールから販売されています。瓶の他に缶があり、飲み口が爽やかな発泡酒です。
ラ・ヴァーグ・ブルー
青い波というネーミングをもつ「ラ・ヴァーグ・ブルー」。青いスパークリングワインはフランス産の辛口です。きれいな色は青色1号という合成着色料でつけられています。イベント好きな方におすすめ! 乾杯用にいかがですか?
幸せを呼ぶ色は「青」
本来「青」は食欲を減退させる色ですが、どうして人気なのでしょう。食欲をなくすようにラーメンのスープを青くしたり眼鏡で食べ物を青く見せるダイエット法もにあるというのに不思議です。写真を撮ってSNSに投稿する生活スタイルが大きく関係しているのは確かな気がしますが、「青」という色が幸せを呼ぶ色というのも関係しているように思います。国によってイメージの違いはありますが、幸せな色を「青」とするのは下記のような理由があるようです。
- 青い鳥…メーテルリンクの小説「青い鳥」の中で青い鳥は幸せになる鳥とされています。
- サムシングブルー…結婚式の日に身につけると幸せになるという4つのものがあります(古いもの・新しいもの・借りたもの・青いもの)。
- 聖母マリア…西洋絵画に描かれているマリア様は青いマントを羽織っています。カトリックではマリア様を「マリス・ステラ(海の星)」と呼び讃えていました。
まとめ
年々、カラフルな食べ物が増えています。野菜でも白が当たり前だったカリフラワーにオレンジや紫が仲間入り。トマトやトウモロコシも今までの常識を覆すような青や紫とカラフルです。今までは「カリフラワーは何色ですか? 」と聞いて「白」と答えるのが正解でしたが、これからは「オレンジ」「紫」と答える人もでてきて解答が難しい。一色にしぼれない時代がきています。そして「赤いのがいちご味」が通用しなくなるかもしれません。「青がいちご味ね」なんて会話が聞こえてきそうです。一昔前ではありえなかった青い食べ物も今では普通。固定概念が払拭できると意識が変わります。問題は味! 美味しければまた食べたい気持ちになるってものです。青い食べ物が増えたのには「バタフライピー」も一躍かっていそうです。着色料が天然で体にいいものなんて、安心して食べられるから嬉しいですよね。
参照