手作りのお弁当を暖かい状態で食べられる「保温弁当箱」は、冬の寒い季節にとても重宝します。
しかしその反面、温かい食べ物が腐りやすい夏の季節に保温弁当箱を使うと、お弁当が直ぐに腐ってしまって危険なのでしょうか?
保温弁当箱を夏に使うと食中毒の危険性があるのか?暑い季節に使う場合はどのような対処が必要なのか?
今記事では、そんな保温弁当箱に関する疑問についてお伝えします。
保温弁当箱とは?
保温弁当箱とは、魔法瓶の水筒と同じ「保温性」を持っているお弁当専用容器の事です。
保温性とは、熱を一定に保つ性質の事です。
「魔法瓶」は内瓶と外瓶の間が真空状態になっている、二層構造で作られている瓶です。
瓶と瓶の間に真空が作られている事で、中に入れた飲み物の熱が外に逃げにくくなっています。
その機能をお弁当箱に応用したのが、保温弁当箱です。
保温機能は”ご飯用容器”にしかない
保温弁当箱の保温機能は、白御飯や炒飯等の”ご飯もの”を入れる容器にしか付いていません。
おかず用の容器は、基本的にどのメーカーの製品も保温機能が無いプラスチック製のタッパー容器です。
ご飯用の容器にしか保温機能が付いていない理由は、お弁当用のおかずは保温すると痛んでしまう食べ物が非常に多いからです。
一方で、ご飯はおかずに比べると痛みにくいです。
これから保温弁当箱を買おうと検討している人は、どのメーカーの物でも保温機能は”ご飯にだけ”付いているのだと覚えておきましょう。
ランチジャータイプならスープやカレーも保温出来る!
保温弁当箱は、ご飯用の容器にしか保温機能がありません。
しかしご飯用容器が深めに作られている「ランチジャータイプ」の保温弁当箱だと、スープ等も入れる事が出来ます。
カレーやシチューを保温機能があるご飯用の容器に入れて、ご飯をおかず用の容器に入れるといった応用も可能です。
保温機能がある容器にカレーやシチューを入れる場合は、おかず用容器に入れているご飯は冷たくなってしまう事に注意しましょう。
保温弁当箱を販売している会社
保温弁当箱を販売しているメーカーは多くありますが、中でもおススメする有名ブランドを3つご紹介します。
サーモス
サーモスは、1904年にドイツで生まれた魔法瓶ブランドです。
サーモスはドイツ発祥のブランドですが、現在多くの会社を含めて製造・販売されているステンレス製魔法瓶は、日本の会社が作ったものです。
ステンレス製の魔法瓶を開発したのは、日本酸素株式会社(現:日本酸素ホールディングス株式会社)です。
ドイツのサーモスが開発した魔法瓶はガラス製だったので、割れやすいという弱点がありました。
ステンレス製にすることで簡単に割れなくなり、更にガラス製のものよりも保温性に優れた魔法瓶になったといわれています。
現在日本にあるサーモス株式会社は、日本酸素株式会社が1989年にイギリス・アメリカ・カナダのサーモス事業を買収した後に、2001年に魔法瓶を扱っていた株式会社日酸サーモと結合して出来た会社です。
サーモスで有名なのは飲料用のタンブラーや水筒ですが、保温弁当箱も様々な種類で販売しています。
タイガー
水筒の他に炊飯器・電気ポット等の白物家電を取り扱っているタイガー(タイガー魔法瓶株式会社)も、高機能の保温弁当箱を製造・販売しています。
タイガーは日本の会社です。大阪府門真市速水町に本社があります。
アスベル(ランタス)
アスベル社が取り扱っている保温弁当箱「ランタス」も、高い人気を誇っているブランドです。
アスベル社も日本の会社です。奈良県大和郡山市池沢町に本社があります。
アスベル社は保温弁当箱の他にも、キッチン用品や台所用品・バス用品等といった生活品を幅広く販売しています。
食中毒とは?代表的な食中毒の原因になる菌
前置きとして保温弁当箱についてご紹介しましたが、ここからは記事の本題となる「夏に保温弁当箱は使用出来るか」について具体的にお話します。
先ずは食べ物が腐りやすい夏に起こりやすい「食中毒」の原因になる代表的な4種類の菌と、それぞれの菌が繁殖した食品を食べた場合に起きる症状について、ご説明します。
サルモネラ菌
サルモネラ菌は、加熱不足の卵・肉・魚料理に付きやすい菌です。
ご飯ものの場合は、オムライスやそぼろ丼・ミニかつ丼等で食中毒を起こしやすいです。
サルモネラ菌は、熱を充分に通せば死滅します。
卵や肉を使う場合は、生焼けにならないように火を良く通しましょう。
サルモネラ菌が起こす症状
サルモネラ菌に感染すると、以下の症状を起こします。
・嘔吐
・腹痛
・下痢
・発熱
カンピロバクター
カンピロバクターは加熱不足の鶏肉等に繁殖する菌です。
ご飯ものの場合は、オムライスや鳥そぼろ丼等の鶏肉を扱った料理で感染しやすいです。
カンピロバクターが起こす症状
カンピロバクターに感染すると、以下の症状を起こします。
・下痢
・腹痛
・発熱
・頭痛
・倦怠感
・筋肉痛
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は、あらゆる食品に繁殖します。特に手で触って作る料理(おにぎり・寿司・いなり寿司・調理パン等)に繁殖しやすいです。
夏に起こる食中毒で最も原因になりやすい菌で、ご飯ものは特に感染しやすいです。
人間の手や指にも常に付いている菌なので、食品の加熱による殺菌以外にも、食べる前に手を良く洗って殺菌・消毒を行う事が重要です。
黄色ブドウ球菌が起こす症状
黄色ブドウ球菌に感染すると、以下の症状を起こします。
・吐き気
・嘔吐
・腹痛
・下痢(まれに発生)
腸管出血性大腸菌(O157・O111等)
腸管出血性大腸菌は、加熱不足の肉類や魚・生野菜が傷むと繁殖しやすい菌です。
高齢者や子供の場合は食後3~8日後に死に至る事もある、毒性が強い恐ろしい菌です。
ご飯ものですとオムライスやそぼろ丼等の他に、手作りの焼き鮭を乗せたりする場合も注意が必要です。
腸管出血性大腸菌が起こす症状
腸管出血性大腸菌に感染すると、以下の症状を起こします。
・激しい腹痛
・下痢
・下血(真っ黒い便が出る)
・皮膚に紫色の痣が出来る
・痙攣を起こす(※重症時)
(参考元:農林水産省「食中毒をおこす細菌・ウイルス・寄生虫図鑑」)
ご飯が腐るとどうなる?
保温弁当箱に入れて保温する事が出来るご飯ですが、管理を怠っていると通常のお弁当箱に入れていても腐ります。
ご飯が腐ると、以下のような状態になります。
このような状態になっていたら、絶対に食べずに捨ててください。
ご飯が腐っている時の状態
【見た目】
・全体的に黄色くなっている
・ネバネバしている
・糸を引く
・カビが生えている
・全体的にベチャベチャしている
【臭い】
・酸っぱい臭いがする
・納豆のような臭いがする
・明らかな腐敗臭がする
【味】
・苦みを感じる
・酸味を感じる
保温弁当箱は夏でも使える?
上記で述べた食中毒菌とご飯の腐った状態を元に、本題である保温弁当箱の夏の使用について可否を述べます。
結論をいうと、対策さえ十分に行えば保温弁当箱を夏に使用しても問題ありません!
夏に保温弁当箱を使う場合は、以下の対策を必ず行うようにしましょう。
保温弁当箱に入れたご飯を痛ませない対策方法
ここからは、保温弁当箱を夏に使う場合に、ご飯を痛ませない為に必ず行うべき対策方法についてご説明します。
必ず行っていただきたい対策方法は、以下の3点です。
容器に詰める前に粗熱を充分取っておく
おかずを含めて、お弁当が腐りやすい温度は30℃~40℃です。
保温機能の無いおかず用容器におかずを詰める場合も、作ってから家を出る直前まで冷蔵庫で冷やしておいた上で、保冷剤を蓋をした容器の上に乗せて持っていきましょう。
ご飯の場合は容器に詰める前に皿等に平たく乗せておいて粗熱を良く取ってから、保温容器に詰めて蓋をせずにラップをかけてから、持っていく直前まで冷蔵庫で冷やしてください。
平たい皿の上にご飯を置いてから、おかずと一緒に扇風機の風を浴びせて冷やして容器に詰める方法もあります。
殺菌作用がある食品を入れる
菌を死滅させる作用がある食品をご飯と一緒に保温容器に入れておく事で、ご飯が食中毒菌に感染しにくくなります。
殺菌作用がある食品は、以下のものがあります。
殺菌作用がある食品
・梅干し
・大葉
・紫蘇
・酢
・醤油
・わさび
・カレー粉(ご飯にドライカレーを混ぜた「混ぜカレー」にすると、ご飯が傷みにくい上に食べやすいです)
痛みやすい食品を一緒に入れない
夏場は食品が全体的に腐りやすい季節です。
特に長時間一定の温度で保存する保温弁当箱に食べ物を詰める場合は、腐敗が早い食品を避けるようにしましょう。
腐敗しやすい食品は、以下の通りです。
腐りやすい食品
・生の魚介類(いくら・貝類・刺身等)
・卵(※半熟のオムレツも夏は危険です)
・肉・魚
・生の野菜
・果物
卵や肉・魚介類を使う炒飯・ピラフ・オムライス・丼もの・炊き込みご飯等は、夏には入れないようにしましょう。
炊き込みご飯は醤油が入っているので腐りにくいと思いがちですが、野菜や肉から出る出汁の方が多く汁気もあるので、夏場は非常に腐りやすいです。
スープを入れる場合は冷製スープを入れる
保温弁当箱の特徴は魔法瓶の水筒と同じく、温かいものは温かいままの状態で長時間温度を保ちます。
その反面、冷たいものも冷たいままの状態で長時間温度を保ってくれます。
ランチジャータイプの保温弁当箱にご飯では無くスープを入れたい場合は、温かいスープでは無く冷製スープを入れると、冷たい状態で食中毒の危険も無く美味しいスープが楽しめます。
ただし、牛乳入りの冷製スープは避けましょう。
牛乳は季節を問わず持ち運びに向いていない食品です。菌が非常に繁殖しやすく短時間で直ぐに腐ってしまうからです。
冷製スープはコンソメスープで作るのが無難です。
まとめ
寒い季節でもご飯を温かい状態で食べられる保温弁当箱は、夏でも対策をしっかりと行えば使う事が出来ます。
夏に使う場合は粗熱を良く取って30℃以下の状態にしつつ、梅干し・紫蘇・等の殺菌作用がある食品を乗せておくと、食中毒になる危険性が非常に低くなります。
夏の保温弁当箱に入れると安全である、おススメのご飯ものは「梅入り酢飯」です。
良く冷ました寿司酢入りのご飯に、叩いた梅干しを混ぜて作ります。
殺菌効果がある食品を2つ使っていて、サッパリとした味をしているので非常に食べやすいです。
好みで海苔と胡麻を散らしても美味しいです。梅干しは紫蘇や大葉でも応用可能です。
是非とも試してみてくださいね!