「ラードは健康に悪い食品だから食べてはいけない」。
テレビやインターネットの健康情報番組や記事をみると、ラードは上記のようにネガティブな食品として頻繁に取り上げられています。
しかし、ラードは本当に健康に悪い食品なのでしょうか?
結論を先に述べると、ラードは決して摂取してはいけない食品ではありません!
今記事ではラードが「健康に悪い」と世間でネガティブにいわれている原因と、悪評を覆すラードに含まれている栄養素についてご紹介します。
ラードとは
ラード(lard)とは、豚の脂身を集めた食品です。
豚肉特有の風味が強く、常温では白いクリーム状ですが加熱すると透明な液状の油になります。
ラードには以下の2種があります
- 豚脂を100%使用している「純正ラード」
- 豚脂に牛脂やパーム油等を混ぜた「調整ラード」
牛脂・ショートニングと混合しやすい
ラードは牛脂・ショートニングと混同しやすい食品です。
牛脂は、牛の腎臓周囲に付いている脂の事です。
固形の状態の牛脂はラードよりも固く、熱を加えた時の溶け方も穏やかです。また牛脂には牛肉特有のコクがあります。
ショートニングは、植物油を原料にした加工食品です。
バターやラードの代用品として作られた食品で、ラードに見た目や溶け方が似ていますが豚肉特有の風味はありません。
ショートニングは生地に練り込むとサクサクした食感を加える効果がある為、料理よりもケーキやクッキー等のお菓子作りに良く使用されます。
ラードは何故「健康に悪い」といわれている?
ラードについて先ずご紹介しましたが、ラードは世間では「摂取してはいけない食品」として頻繁に取り上げられています。
何故ラードは「食べてはいけない食品」としてネガティブな声が多数挙げられてしまっているのでしょうか?
ラードが健康に悪いといわれる理由として、下記の3つが主に悪評として挙げられています。
脂肪だから「健康に悪い」
ラードは豚の脂身を集めた食品です。
動物の脂身は脂肪ですので、体に悪影響を及ぼす物だと判断されて「健康に悪い」といわれていると考えられます。
動脈硬化を起こすから「健康に悪い」
ラード等の脂肪は、動脈硬化を引き起こすから「健康に悪い」という評判も多く挙げられています。
動脈硬化は、体に流れている血がドロドロになってしまう状態です。
動脈硬化は、心筋梗塞・脳梗塞等の命に関わる重篤な疾患を引き起こす原因だといわれています。
腸に炎症を起こすから「健康に悪い」
ラードを食べてはいけない理由の3つ目に「腸に炎症を起こすから」という声も多数散見されました。
ラードは脂肪である為、腸に悪影響を与える「脂肪酸」も出すという噂が広がっている可能性が高いです。
知らない人が多い!?「ラード」の栄養素について
動脈硬化や腸に悪影響を与える脂肪酸を作り出すからという理由でラードは嫌悪されがちですが、本当にラードは不健康なだけの食品なのでしょうか?
ここからは意外と知らない人が多い、ラードに含まれている栄養素についてご紹介します。
下記はラード(純正・100g)に含まれている栄養素の一覧です。
エネルギー | 885kcal |
ビタミンD | 0.2μg |
ビタミンK | 7μg |
脂質 | 100g |
データ元:食品成分データベース
ラードにはビタミンDが含まれている!
ラードには100g中にビタミンDが0.2μg含まれています。
ビタミンDは、体内の機能性タンパク質を活性化させる効果があります。
機能性タンパク質はビタミンDによって活性化される事で、下記のような健康的な作用を及ぼします。
・正常な骨格と歯の発育促進
・小腸でのカルシウムとリンの腸管吸収促進
・血中カルシウム濃度の調整
・神経伝達や筋肉収縮の正常化
データ元:健康長寿ネット「ビタミンD」
ラードにはビタミンKも含まれている!
ラードには100g中にビタミンKも7μg含まれています。
ビタミンKは、血液凝固に関与する栄養素です。
体内の血液を実際に凝固させる成分は「プロトロンビン」ですが、ビタミンKは肝臓で生成されたプロトロンビンの補酵素として働きます。
プロトロンビンの生成を助ける栄養素ですので、ビタミンKが不足するとプロトロンビンも減少してしまいます。
プロトロンビンが減少してしまうと出血をした時に血液凝固に時間が掛かってしまい、大量出血を起こす危険が高くなります。
さらにビタミンKは、丈夫な骨を生成する為にも必要な栄養素です。
骨の中に存在するタンパク質の1種「オステオカルシン」を活性化させる事で、カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す働きがあります。
加えて、ビタミンKは動脈の石灰化を抑制する効果もあります。
ビタミンKの1種「メナキノン-4」は、骨粗鬆症の治療用医薬品として処方されています。
ビタミンKは、正常な骨と血を生成・維持する為に必要不可欠となる栄養素です。
データ元:健康長寿ネット「ビタミンK」
脂質は不健康成分ではない!効能・効果について
ラードには、人体を健康に保つ為に重要な栄養素である「ビタミンD」と「ビタミンK」が含まれています。
しかし栄養表を見ても、数値が非常に高いエネルギーと脂質に目が行きがちです。
ラードは豚の脂肪なので、脂質が多い事は当然です。
しかし脂質が多い故に「ビタミンが入っていても、やはり健康に悪いのではないか?」と疑ってしまいやすいです。
結論をいうと、脂質は摂り過ぎなければ人体に悪影響は及ぼしません!
更に、脂質は人体を正常に保つ為に非常に大切な栄養素です。
下記は脂質が持つ体への効能・効果です。
脂質の効能・効果
脂質は生きる上で必要不可欠である「三大栄養素」の1つであり、人間や生き物が活動をする為に必要な成分「エネルギー」を作り出します。
(※三大栄養素はタンパク質・脂質・炭水化物の3つです。)
さらにホルモンや細胞膜・核膜を構成したり、皮膚の下に「皮下脂肪」として蓄えられる事で臓器を保護する働きをします。
体を寒冷から守る働きもあり、脂溶性ビタミンであるビタミンA・D・E・Kの体内への吸収も促します。
いずれの働きも生き物が生きていく上で重要である為、脂質は必ず摂取しなければいけない栄養素です。
ラードはむしろ腸に良い!?
ラードには関する悪評の1つに「脂肪酸を作り出す」と挙げられていますが、実際のラードは腸に良い影響を与える栄養素を含んでいます。
ラードにはビタミンD・ビタミンKのほかに「オレイン酸」という成分が含まれています。
オレイン酸は、腸の蠕動運動を促す働きがあります。
さらにラードの脂質が潤滑油の役割を行う事で、排便がスムーズになります。
ラードの脂質は、飽和脂肪酸と一値不飽和脂肪で構成されています。
一値不飽和脂肪も脂肪酸の1種ですが、悪玉コレステロールの減少や循環器系疾患のリスクの軽減等といった、健康的な効果を持っています。
ラードにトランス脂肪酸が含まれているか?
また腸に悪影響を及ぼすといわれている脂肪酸は「トランス脂肪酸」です。
トランス脂肪酸は、主に植物性の油に含まれている脂肪酸ですが、ラードや牛脂にも含まれています。
健康に気をつかっている方は、できるだけラードは避けた方が良いです。
ラードをグラスフェッドバターで代用するのがオススメ
ラードは、体に良い働きをしてくれる面もありますが、一方で、トランス脂肪酸といった健康に悪影響があるとされているデメリットもあります。
では、ラードの代わりに使える同じような動物性の脂はあるのでしょうか?
そこでお勧めできる代用品がグラスフェッドバターです。
ラードをグラスフェッドバターで代用するのは、健康面でメリットがあると考えられています。
ラード | グラスフェッドバター | |
---|---|---|
融点 | 低い | 高い |
風味 | 豊か | ラードの風味に近い |
常温保存 | 可能 | 難しい |
トランス脂肪酸 | 含まれる可能性がある | 含まれない |
オメガ3脂肪酸 | 少ない | 多い |
ビタミンE | 少ない | 多い |
炒め物・揚げ物に適しているか | 適している | 適していない |
ラードをグラスフェッドバターに置き換えることで、トランス脂肪酸の摂取を無くして、牧草飼育の牛から作られたグラスフェッドバターの栄養素を摂取することができます。
ラードを使っていた料理に、グラスフェッドバターを同量加えると、風味の変化はほとんどありません。ただし、ラードの風味が気になる場合は、少量のオリーブオイルを加えるとよいでしょう。
ラードをグラスフェッドバターに置き換えることを検討してみてはいかがでしょうか。
オススメのグラスフェッドバター
初めてグラスフェッドバターを試す人はこちらのウエストゴールド社の無塩グラスフェッドバターが良いです。アマゾンでも1番人気があるものです。
グラムあたりの値段が破格で、コスパ重視なら、断然お勧めできるグラスフェッドバター。5kgと超大容量ですが、小分けにしてラップ包んで冷凍保存しておけるならこの商品を選びましょう。
1kgあたり約2000円と、最も安い無塩グラスフェッドバターです。
ラードはどれだけ摂れば良いの?
ラード等に含まれている脂質は、人間を含めた生き物が生きていく上で必要不可欠となる重要な栄養素です。
ただし1日摂取量には限りがある為、摂り過ぎると悪評に挙げられている通り、動脈硬化の原因になります。
その反面、基準量を守って摂取すれば体に良い影響を及ぼしてくれる栄養素でもあります。
ラードの1日摂取目安量は、大さじ1杯(12g)です。
炒め物やラーメン等に入れる場合は、上記の目安量を超えないように注意しましょう。
ラードを美味しく摂取出来る!おススメ料理
ラードは基準量を守って摂取すれば、体を健康に保つ上で非常に有益になる食品です。
下記はラードを摂取基準量以内で美味しく食べられる、オススメの料理です。
肉野菜炒め
豚の脂身であるラードは、豚肉と勿論相性抜群です。
豚バラ肉とキャベツ・玉ねぎ・もやし・キノコ等を炒めて作る「肉野菜炒め」の炒め油に1人前あたり大さじ1杯のラードを使うと、ラードに含まれている豚の風味とコクが炒め物に加わります。
炒飯(チャーハン)
卵だけで作るシンプルな炒飯から具材をふんだんに使って作る具沢山の炒飯まで、様々な炒飯の炒め油としてもラードはオススメです。
ラードを使う事で炒飯に風味とコクが加わり、シンプルな炒飯でも食べ応えがある一品に仕上がります。
塩焼きそば
中華麺と豚肉・ニラ・チンゲンサイ・エビ等を炒めて塩ダレで味付けする「塩焼きそば」の炒め油に、1人前あたり大さじ1杯のラードを使用します。
こちらもラードに含まれている豚の風味が焼きそばに加わる事で、コクと食べ応えがある塩焼きそばに仕上がります。
サーターアンダギー
ラードはショートニングのようにお菓子に使っても美味しい食品です。
特に揚油を使って作るお菓子と相性が良いです。沖縄のドーナツ「サーターアンダギー」の揚油に少量のラードを加えて、生地をきつね色になるまで揚げます。
ラードの風味と生地の甘味・香ばしさが合わさる事で、コクと食べ応え・満足感がある美味しいサーターアンダギーが楽しめます。