あなたは「菱(ヒシ)の実」という食品をご存知でしょうか?
スーパー等の小売店では見かけない珍しい食品ですが、優れた栄養素を豊富に含んでいる「スーパーフード」の1つです。
今記事では菱の実とは何か?特徴と含まれている栄養素、美味しい食べ方までをまとめてご紹介します!
菱の実とは
菱の実とは、ミソハギ科ヒシ属の1年草「菱(ヒシ)」の実です。
別名「水中の落花生」とも呼ばれており、栄養が豊富です。
菱は水の底に根を張り、蓮(ハス)のように水中から茎を伸ばして水面に葉を浮かべる植物です。
菱の名前の由来は、葉の形が菱形だからです。
菱(菱の実)の特徴
菱(菱の実)の特徴は、他に下記のものがあります。
・菱の実は日本では古代から食べられているが、現在は希少品で一部の地域のみで食べられている
・菱の実は忍者の武器「マキビシ」のような見た目をしている
・実は茶色もしくは黒色の硬い殻に覆われており、中にある可食部の色はクリーム色か白色。食べると滑らかな舌触りをしている
・人工栽培品と天然品の2種類がある
・栽培品の菱の実はマッチ箱程の大きさ、天然品の菱の実は爪程の大きさになる
・菱の蔓は赤みがかった紫色、葉の色は鮮やかな緑色をしている
・鮮やかな黄色い小花を咲かせた後に実がなる
・実は8月頃から成熟し始め、硬くなった頃(秋)に収穫する
・収穫しなかった菱の実は茎から自然に落ちて、翌年1月頃に水中で発芽する
・栽培用の苗は2月から一部の地域で出回る
・栽培する場合は、水面に密集させる方法を用いる
菱の生息地
菱の生息地は、日本・ヨーロッパ・中国南部・ロシア・ベトナム・台湾・ミャンマーです。
原産地はヨーロッパですが、世界中に自然種が生息しています。
菱は温帯地帯の湿地に多く自生しています。寒さに弱いので、気温25~36度・水深60cm程の沼地や池が最適な環境とされています。
国内では、福岡県と佐賀県で主に栽培と収穫がされています。
一般販売用の出荷数はどちらの県も未だ少ないですが、2県ともに菱の実を特産物として扱っています。
菱の実の旬
菱の実の旬は、秋(9月~11月)です。
古代の日本では全国で自生していましたが、現在は九州等の一部地域のみで収穫・栽培されています。
1年草ですので、自生している自然の菱の実は全て収穫せずに、翌年の苗用に実を数割残して収穫されています。
菱の実に含まれる栄養素
生の菱の実(可食部・100g)に含まれている栄養素は、下記の通りです。
エネルギー | 183kcal |
タンパク質 | 5.8g |
炭水化物 | 40.6g |
鉄 | 1.1mg |
亜鉛 | 1.3mg |
ビタミンK | 2μg |
葉酸 | 430μg |
ビタミンC | 12mg |
カリウム | 430mg |
カルシウム | 45mg |
マグネシウム | 84mg |
リン | 150mg |
(データ参考元:食品成分データベース)
葉酸とカリウムが豊富!
菱の実は葉酸とカリウムが豊富です。100g(生・可食部)中に葉酸430μg、カリウムも430mg含まれています。
葉酸は赤血球の生産を助ける栄養素で、代謝にも関与している成分です。他にも以下のような働きを行います。
- DNA・RNA等の核酸を生成
- たんぱく質の生成を促進し、細胞の生産・再生を補助
妊娠初期の妊婦は胎児の発育にも大きく影響する栄養素なので、積極的に摂る必要があります。
カリウムは細胞の浸透圧を維持する栄養素で、体内の水分調節・神経刺激の伝達・心臓機能や筋肉機能の調節・細胞内の酵素反応の調節等をする働きがあります。
さらに腎臓へのナトリウムの再吸収を抑制して体外に排出する事で、血圧を下げる働きも行います。
この働きによって、高血圧を発症要因とする心臓病等の予防に効果があると期待されています。
カルシウム・マグネシウム・リンも豊富!
菱の実にはカルシウム・マグネシウム・リンも豊富に含まれています。
生の菱の実(可食部)100g中にカルシウム45mg、マグネシウムは84mg、リンは150mg含まれています。
カルシウム・マグネシウム・リンの働きは、それぞれ下記の通りです。
【カルシウム】
・骨や歯を構成
・細胞の分裂・分化や筋肉収縮を抑制
・神経興奮を抑制する働きがあるので、リラックス作用(不眠症・ストレスの緩和)
・血液凝固作用の促進等
【マグネシウム】
・体のエネルギー作り
・栄養素の合成や分解
・カルシウムと拮抗して筋収縮を制御
・血圧の低下や血小板の凝集を抑制(血栓を作りにくくする)
【リン】
・骨や歯を正常に発達させる
・細胞膜の構成
・DNA・RNA等の核酸の生成
・様々な代謝反応への関与
・酸とアルカリのバランス調整
・浸透圧の調整
・心臓や腎臓の機能維持
・神経伝達への関与
(参考元:健康長寿ネット「カルシウム」/「マグネシウム」/「リン」)
菱の実は薬にもなる!?
菱の実は、古代から民間薬としても食べられています。
滋養強壮・腰の痛み・健胃作用があると伝えられています。
菱の実の食べ方
菱の実(菱)の特徴と栄養素についてご紹介しましたが、ここからは菱の実をどのように食べるのかご説明します。
菱の実は、生では食べられません。
下痢や腹痛・貧血や浮腫みの原因になる虫が中に入っている事も多い為、必ず加熱調理が必要になります。
加熱調理は殻付きのまま、沸騰したお湯で10分程蒸すか茹でます。粗熱を取ってから殻を剥いて食べましょう。
おススメの料理方法
菱の実は加熱すればそのまま食べられますが、ナッツのように料理に入れて食べる事も可能です。
下記は菱の実を入れて作る、おススメの料理です。
豚バラ炒め
菱の実と豚肉は相性抜群です。
軽く茹でて殻を剥いた菱の実を、豚バラ肉・キャベツ・玉ねぎ等と一緒に炒めます。
味付けは塩コショウだけでも充分ですが、甘辛い味付けにすると菱の実と豚肉の美味しさが増します。
スペアリブ
同じく豚肉を使った料理である「スペアリブ」の煮汁に、加熱調理をして下処理した菱の実を加えます。
スペアリブと一緒に煮込む事で、豚肉と菱の実の両方に甘辛い味が加わって絶品です。