新巻鮭という食品をご存知でしょうか?
鮭といえば塩鮭を思い浮かべる方が多いでしょうが、新巻鮭は初めて聞くという方もいらっしゃるでしょう。
今記事では新巻鮭とはどんな食品なのか、塩鮭との違いや作り方・食べ方についてまとめて解説します。
新巻鮭とは
新巻鮭(あらまきざけ)とは、内臓を取り除いた鮭を塩漬けにして干した加工食品です。
保存食の1つで、市場では年末年始に多く並びます。東北地方では各家庭でも作られており、普段の食事で良く食べられています。
贈呈品としても人気が高い新巻鮭の名前の由来は、有名な諸説が2つあります。
・作る過程で荒縄もしくは藁で鮭を巻いたから(荒巻鮭・藁巻鮭→新巻鮭になった)
・塩漬けの際に鮭の身に粗く塩を撒くから(粗撒き鮭→新巻鮭になった)
どちらが本当であるかは不明です。
現在の呼称で使われている「新巻」は、その年に水揚げされた新物の鮭を意味しているといわれています。
新巻鮭の作り方
新巻鮭は魚市場や通信販売等で購入出来ますが、自宅でも作る事が可能です。
新巻鮭を手作りしたい方は、下記を参考に準備と調理を行いましょう。
材料
・鮭(頭部付き):1本(※鮭等の大型の魚は生きて泳いでいる状態だと「匹」で数えますが、釣り上げた時や死んでいる状態では「本」等で数えます)
・塩:鮭の重量の15%程度(鮭100gあたり15g)
・タワシ:1個
・スプーン(大きめ):1個
・新聞紙:数枚
・大きめのポリ袋(透明なゴミ袋でも可):1枚
・重石:10㎏分
・吊るし紐:1本
・割りばし:数本
・ポリシート:数枚
・水(洗浄・塩抜き用)
作り方
【下処理】
(1)鮭の口を開き、上顎と下顎にあるエラとの接続点を切る
(2)鮭の外側にあるエラブタを開き、エラを包丁で切り離して取り除く
(3)尾びれを利き腕では無い方の手で掴み、鮭の腹を右側(左利きの人は左側)にして肛門から頭側に向かって包丁を入れる
(4)胸ビレ辺りまで腹を包丁で切り開く。利き手を鮭の腹の中に入れ、内臓をかき出して取り除く
(5)中骨に接している部分(メフン)の中央に切り込みを入れる。大きめのスプーンでメフンをかき出して取り除く
(6)流水とタワシを使って魚の内外を良く洗う
【漬込み】
(1)魚体の尾から頭に向かって塩を擦り込む。表面とウロコの間・腹の内部・エラを取り除いた空洞・眼球のくぼみの中まで満遍なく塩が入るように詰め込んでいく
(2)鮭の表面に新聞紙を数枚重ねて貼り付ける(魚から出てくる体液を吸い取る為)。ポリ袋の中に鮭を入れ、空気を充分に抜いてから口を縛る
(3)冷暗所に2~3日置く。魚が入った袋の上に重石を乗せてから、更に2~4日冷暗所に置いて漬け込む
【塩抜き】
(1)ポリ袋から鮭を取り出し、新聞紙を外す。真水に一晩浸して塩抜きをする(※塩辛い鮭の身が好みの場合は30分程度でもOK)
(2)鮭の表面をタワシで擦り洗いして、ヌメリを充分に取り除く
【乾燥】
(1)吊るし紐を鮭の後頭部→左右のエラ穴→口の順に通して、輪に結ぶ
(2)腹を開き、割りばしを使って固定する
(3)風通しの良い場所に鮭を吊るして乾燥させる
(4)腹の中が乾いたら割りばしを外す。ある程度乾燥したら吊るし紐に結んだまま下す
(5)形を整えて、ポリシートで鮭を包む。重石を乗せて冷暗所で一晩置く(水分を均一にさせる)
(6)2番から5番の作業を、適度に乾燥するまで繰り返して仕上げる
塩鮭と新巻鮭と違い
新巻鮭と同じく鮭を塩漬けした食品に「塩鮭」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか?
塩鮭は「塩漬け加工を施した鮭」の総称です。新巻鮭は本来、塩鮭の1つとして区別される物です。
ただし一般的な「塩鮭」は、鮭の切り身を塩水に漬け込んで防腐性を高めている加工食品です。
鮭を丸々1本塩漬けして乾燥させる新巻鮭とは異なり、一般的な塩鮭は乾燥させないので魚の水分がそのまま残っています。
さらに一般的な塩鮭は、漬け込む塩水の塩分濃度によって「甘口」「中辛」「辛口」の3種類に分かれます。
おススメの新巻鮭料理
新巻鮭と一般的な塩鮭との違いをご説明した上で、ここからは新巻鮭を使って作るおススメ料理をご紹介します。
新巻鮭は、年末年始に東北地方の市場で良く出回ります。
鮭を使って作る料理は多数ありますが、下記でご紹介しているものは年末年始の食卓にピッタリの、冬に是非とも食べていただきたい新巻鮭料理です。
新巻鮭のホイル焼き
新巻鮭の切り身をたっぷりの水に一晩浸して、塩気を充分に抜きます。
キッチンペーパー等で水気を良く拭いてから、しめじ・えのき・人参とバターと一緒にアルミホイルに包んでフライパンで蒸し焼きにします。
長い時間をかけて乾燥させている新巻鮭は、鮭の旨味が凝縮しています。
旨味が凝縮した鮭の身にクリーミーなバターの風味が合わさったホイル焼きは、寒い冬の時期にこそ楽しんで頂きたい料理です。
新巻鮭の石狩鍋
たっぷりの水に浸して塩気を抜いた新巻鮭の身と頭を、白菜・春菊・豆腐・シイタケ等と一緒に味噌鍋にします。
仕上げにバターを入れると、北海道の郷土料理「石狩鍋」が出来上がります。
鮭の頭には、コラーゲンが豊富に含まれています。
コラーゲンは美肌効果があるといわれている健康成分です。是非とも新巻鮭を使って鍋料理を作る際は、頭部も一緒に煮込んで食べましょう。
新巻鮭の粕汁
新巻鮭の切り身を水で塩抜きしてから、ニンジン・豆腐・大根・こんにゃく・白ネギ等と一緒に酒粕を溶いた味噌汁にします。
鮭の旨味が凝縮されている新巻鮭は、粕汁に入れても旨味が消えません。
新巻鮭のおにぎり
新巻鮭の切り身をたっぷりの水に漬けて塩抜きしてから、フライパンまたはグリルで焼きます。
炊き立ての白米に包んでおにぎりにしてから、焼き海苔でおにぎり全体を包みます。
旨味が凝縮している新巻鮭のおにぎりは、通常の鮭おにぎりよりも絶品です。
おにぎりの具に新巻鮭を使う場合は、塩抜き時間を短めにしても構いません。